2009年10月04日

Silent Mode

09-10-4
10/3日〜9日までギャラリー<Place M>で展覧会を開催します。
10数年前のファーストプリント/ビンテージを展示します。

Silent Mode 1992
これらの写真は1990年〜1992年の間に撮られた写真です。
ヘキサーというカメラに、
<Silent Mode>というシャッター音がしない撮影モードが付いていると聞き、
直感的にこうした写真が可能なのではないかと思った。
写真の動機というものはそんな程度のことかもしれない。

<サイレント・モード>・・・誰が名付けたのか、何とも言えずいい響きだ。
<サイレント>・・・思えば、それは写真が発明されて以来、
今のこの瞬間まで写真はずっとサイレントの中にいる。
写真はいつも沈黙しているのだ。

60cm先、カメラの眼と僕の眼が、互いに引き合うように交差する。
赤外線センサーの赤い眼と、飢えた僕の肉眼が女の顔面を撫でる。
音もなく肌をなめる赤い光の指先も、女には感じられないことだろう。
電車が揺れると、女も揺れた。
揺れるその肉体のそこかしこから、名も知らぬ香水の匂いがわき上がって来る。
甘酸っぱい女の匂いはいつも、僕のすぐそこで膨らんでは逃げる。
「獲物を捕捉せよ!」
どこからともなくそんな声がした。
息を吸っては吐き、深く吐いては吸う。
僕はひとり、その匂いを捜しながら、
シャッターに触れた人差し指に集中するのだ。
指は、たえずシャッターの溝に潜り込んでいる。
いや、その指はすでに、そこの女に触れているのかもしれない。

写真が一瞬にして生まれるとすれば、
光の赤い指と僕の白い指が絡み合いながら伸びて、
息がかかるほどのすぐそこの、
女の白い肌に到達した瞬間に違いない。
                      瀬戸正人
posted by setos at 17:58| Voice